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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第39章 《巻の弐―黒い影―》
泉水は伊左久に頷くと、その後について部屋を出た。廊下を歩いた突き当たりが庵主光照の居間である。来客の際は客室にもなる。
「庵主さま、せんにございます」
廊下から障子越しに声をかけると、内から涼やかな声が返った。
「おせんどのか、お入りなさい」
泉水は障子を開け、端座すると両手をついた。
「奥方さま、お久しぶりにございます」
その声には確かに聞き憶えがあった。
ああ、やはり―という想いが押し寄せる。