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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第6章 《巻の壱》
愕いたような瞳が泰雅を見つめていた。黒目がちな瞳には大粒の涙が浮かんでいる。色の白い、なかなかの美人である。
以前の泰雅なら、まず間違いなく、早々に恋の科白を囁いていたに相違ない。が、泰雅は、哀れなと思っただけであった。何の事情があるのかは知らないけれど、若い女が川に身を投げようとするには、よほどのなりゆきがあるのだろう。しかも、女は身重、産み月も近いときている。恐らくは身投げの理由もその辺りにあるのかもしれない。