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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第41章 《巻の四―岐路(みち)―》
その日、泉水は寺を出て、近くの河原まで赴いた。その川は毎朝、水汲みに来る場所でもある。河原には春の七草にも数えられる山菜がたくさん自生している。泉水は持参した竹籠に溢れんばかりの山菜を摘んだ。蓬や芹は湯をざっと通し、お浸しにしても良いし、更に粥や味噌汁の具にもなる。時には蓬餅をこしらえれば、見かけによらず甘い物好きの伊左久がたいそう歓ぶ。
籠を一杯にして、ふと気付いたときにはもう陽が高くなっていた。朝方寺を出てきたのだから、随分と長い刻を過ごしたことになる。
籠を一杯にして、ふと気付いたときにはもう陽が高くなっていた。朝方寺を出てきたのだから、随分と長い刻を過ごしたことになる。