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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第41章 《巻の四―岐路(みち)―》
泉水は思わず眼を奪われ、その場に立ち尽くした。行きは急いでいたから通り過ぎたものの、今は帰路である。少しくらいならば寄り道も構わないだろうと思い直し、野原にしゃがみ込んだ。普段なら野の花を手折ることなどしないけれど、今日だけは特別と言い訳する。伊左久が二日前から風邪を引き込んで、寝込んでいるのだ。あの掘っ立て小屋で一日中寝ているのは、さぞ心むすぼれるに違いない。せめて菜の花の一本なりとも持ち帰って枕辺に飾ってやれば、いかほど歓ぶことか。