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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第41章 《巻の四―岐路(みち)―》
男にとって、幼い息子と過ごす一日のうちのわずかな時間だけが生きていると思えるひとときであった。黎次郎は守役に任じた脇坂倉之助の傅育が良いせいか、まだ四歳ながら、利発な子だ。四歳で論語をすらすらと諳んじ、家臣たちは〝神童でおわす〟と大仰に騒いでいる始末である。
もっとも、肝心の主君が毎日酒浸りのこの有り様では、まだ四歳の世継に期待をかけるのも家臣たちとしても致し方はなかろう。
家老であった脇坂倉之助は三年前に自ら望んで黎次郎の守役となり、家老職を退いた。
もっとも、肝心の主君が毎日酒浸りのこの有り様では、まだ四歳の世継に期待をかけるのも家臣たちとしても致し方はなかろう。
家老であった脇坂倉之助は三年前に自ら望んで黎次郎の守役となり、家老職を退いた。