この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第41章 《巻の四―岐路(みち)―》
だが、恐らく脇坂は泉水に黎次郎を必ずや一人前の武士に育てると誓ったに違いない。そう約束したからこそ、泉水は愛盛りの黎次郎を断腸の想いで手離したのではないか。
その約束を脇坂は律儀に守り続けている。いかにも、あの男らしいやり方だ。冷徹な能吏といった面を持つ一方、脇坂はあれで存外に情が厚い。あの男になら、黎次郎を任せても大丈夫だ。いまだに逃げた女房の面影を追いかけ、飲んだくれてばかりいる父親が育てるよりは、よほど良い。脇坂は信頼するに足る男だ。
その約束を脇坂は律儀に守り続けている。いかにも、あの男らしいやり方だ。冷徹な能吏といった面を持つ一方、脇坂はあれで存外に情が厚い。あの男になら、黎次郎を任せても大丈夫だ。いまだに逃げた女房の面影を追いかけ、飲んだくれてばかりいる父親が育てるよりは、よほど良い。脇坂は信頼するに足る男だ。