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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第41章 《巻の四―岐路(みち)―》
 だが、泉水はパッと身を翻した。墨染めの色も鮮やかな法衣が翻る。それは、あたかも蝶が捕えようとする者の手から、ひらりと身をかわすのにも似ていた。
「待て」
 泰雅は叫び、次の言葉を呑み込んだ。
―待ってくれ。行かないでくれ。
 泉水はまるで心ない猟師から逃れる野兎のように、一心に走り去った。直にそのか細い後ろ姿は山道の向こうに消え、見えなくなった。
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