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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第41章 《巻の四―岐路(みち)―》
伊左久は、強ばったままの泉水の横顔を見つめ、それと判らないほどかすかに眉をひそめた。
泉水は伊左久の不審げな顔にも気付かぬ風で、軽く頭を下げて伊左久の前を通り過ぎた。
「おい、蓮照さん」
伊左久は大声で泉水を呼んだが、泉水は知らぬふりを装い、急いで自分の部屋に戻った。
今は一人になりたかった。一人になって、心を落ち着かせたい。
逃げるように寺に入っていった泉水を見て、伊左久は更にきつく眉根を寄せた。