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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第43章 《巻の壱―花惑い―》
泰雅が父泰久を失って家督を継いだのは十二歳のときであった。まだ前髪立ちの童姿であったのを、家督を継いだからと急遽元服をしたほどである。その頃から、泰雅にとって脇坂の存在は更に重要性を増し、脇坂の言ならば、たとえ臣下であろうと真剣に耳を傾けていたのだ。
が、事ここに至り、泰雅はその脇坂の言葉すら一向に聞こうとはしなかった。以前から、そうであった。泉水に対して、度の越えた執心を見せ、こだわっていた。