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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第43章 《巻の壱―花惑い―》
が、結局、泰雅は継室を迎えようとも側室を持とうともしなかった。ただ毎日、鬱々と酒に溺れる日々を過ごしているばかりであった。長年の荒んだ酒浸りの日々は、若い泰雅の身体を芯から蝕み、二年ほど前から泰雅は肝臓を患っている。顔色もかつての色白の細面であった貴公子ぶりはどこへやら、どす黒い不健康なものとなり、両の眼(まなこ)は虚ろで濁っている。以前は若い奥女中たちは競って殿のお世話をしたがったものだったのに、今は近付くことすら嫌がる有り様であった。