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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第43章 《巻の壱―花惑い―》
 鶯であった。ややくすんだ深緑色の小さな身体がたっぷりと花をつけた枝先にちょこんと止まっている。この垂れ桜は遅咲きの珍しい品種で、江戸市中の桜は既に散ってしまったというのに、まだ満開である。花の色は薄い桃色ではなく、緋色に近い紅。小さな花を無数につけた枝先が地面に届きそうなほどに、重たげにしだれている。
 鶯は愛らしい声でしきりに囀っている。
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