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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第43章 《巻の壱―花惑い―》
それは、ある意味で、榊原の屋敷に戻れと言われたとき以上に、泉水に衝撃を与えたかもしれない科白であった。
「いやじゃ、それだけは絶対にいやじゃ。私を愚弄するにも程があるというもの。そのような辱めを受けるならば、私は、私は」
泉水は泣きながら首を烈しく振り続けた。
「では、ご自害なされませ」
河嶋が懐から何やら差し出す。つと眼前に差し出されたのは、ひとふりの懐剣。
小さな短刀をスと眼の前にかざし、河嶋は微笑んだ。