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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第6章 《巻の壱》
 泰雅はあっさりと頷くと、それきりその話題は持ち出さなかった。一糸まとわぬ泉水の背に手を回し、空いた方の手で手枕をしている。静かな、満ち足りたひとときである。泉水の耳には相変わらず、泰雅の心臓の音が響いてきた。
 愛する男に抱かれて、その胸で男の鼓動を聞く―、女にとってはこの上ない至福の一瞬のはずなのに、何故か素直に歓べない。ひたひたと押し寄せるこの得体の知れぬ不安は何なのだろう。
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