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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第44章 《巻の弐―反旗―》
「面を上げい」
その声に促されるように、泉水がゆるゆると顔を上げる。その刹那、泰雅の顔をよぎったのは驚愕とも感嘆ともつかぬ感情であった。
「―随分と美しうなったな」
五年の尼寺での浄らかな日々は、泉水の本来の美しさを十分に引き出していた。けして男に靡かぬ、媚びようとはせぬ凛とした美しさ、浄らかさは、さながら一輪の花のようである。そのくせ、蝶を惑わす大輪の花のごとき艶やかさ、匂いやかさが漂う美貌であった。