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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第44章 《巻の弐―反旗―》
朱塗りのその短剣を泉水はスと鞘から抜いた。枕許の行灯の火を受け、刃が煌めく。
しばらくその煌めきを見つめた後、泉水は鞘に元どおりに納めた。
「殿がどうしても我が願いをお聞き入れしては下さらぬというのであれば、どうか、ひと想いに殺して下さりませ。生き存えて、おめおめと辱めを受けるよりは死を選ぶ方がはるかに気が楽というもの。この生命なぞ惜しくはございませぬ」
泉水は断じると、時橋の形見の懐剣を手前に置いた。