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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第44章 《巻の弐―反旗―》
 主は自分のはずだ。この屋敷の主は自分だというのに、泉水はまるで我が身こそが主人だとでもいうかのような態度で、泰雅の命を待つわけでもなく自らの意思で閨を出てゆく。
「待て、待ってくれ、行かないでくれ」
―俺を置いてゆくな、一人にするな。
 泰雅は続く言葉を辛うじて呑み込んだ。
 茫然と閉じられた襖を見つめていた泰雅は、慌てて手を差し伸べた。しかし、閉じられたままの襖が二度と開くことはない。
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