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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第44章 《巻の弐―反旗―》
 唇から酒を涎のように滴らせて、濁ったどろりとした双眸を泳がせる様は、誰が見ても正気とは思えない。若い腰元たちは怖がり、誰一人として泰雅の側に近づきたがらない。命じられて酒を運んではくるものの、泰雅の側に置くと、すぐに逃げるようにいなくなってしまうのだった。
 それから更に十日余りを経たある夜、再び泰雅から夜伽をするようにとの達しがあった。暦は既に卯月の下旬となり、遅咲きの垂れ桜も花はすべて散り、緑眩しい葉桜となっている。
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