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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第46章 《巻の四―儚い恋―》
もう聞き飽きたと思っていた時橋の小言さえ、今では懐かしくてたまらない。
むしろ、もう一度聞きたいほどだ。
その時橋も、もういない。唯一、頼りにしていた夢売りの夢五郎も京に戻り、綾小路家を継ぎ、遠い人となった。誰も彼もが泉水の傍から去ってゆく。
漸く我に返り、現実を認識したときも、屋敷に帰らなければならないとは少しも思わなかった。外出は固く禁じられていたが、もうどうなっても良いという投げやりな気になっていた。