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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第46章 《巻の四―儚い恋―》
 十六夜の月が川面に映り、月の影を宿した水面がかすかに揺れている。川のほとりに一本だけ植わった桜の大樹が月光に照らされ、黒々とした影を地面に伸ばしていた。
 それでも、まだ泉水は迷っていた。
 それは当然のことだ。泉水は立場上、まだ泰雅の室であることに変わりはない。縁を切るとはいっても、あくまでも泉水一人の個人的感情だけのものにすぎない。泰雅の妻という立場で兵庫之助の住まいなぞに行けば、世間的に二人の関係がどのように見られるか。
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