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第46章 《巻の四―儚い恋―》

　とりとめもない物想いを振り切り、顔を上げた時、表の方で人の気配がした。真夏のこととて、表の腰高障子は開けている。
　ふいに現れた闖入者と視線が合ったその瞬間、泉水の顔が見る間に強ばった。
「―」
　愕きのあまり、声すら出ない。
「泉水、迎えにきたぞ。共に帰ろう」
　泉水は無意識の中に烈しく首を振った。
―どうして、どうして、この男がここにいるの？