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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第46章 《巻の四―儚い恋―》
泰雅の動きがふと止まった。
哀しげな瞳で泉水を見つめる。
「憎んでも良い、嫌われても良い。頼む、どうか俺の傍にいてくれ。俺には泉水が必要なのだ」
悲痛な叫びが、泉水の胸を衝く。
そこには、狂気に憑かれた男ではなく、ただ一人の傷ついた男がいるだけであった。
―もし、奥方さまがこのまま殿を拒絶なさり続けるならば、今度こそ、殿は真に駄目になってしまわれるやもしれませぬ。
脇坂倉之助の言葉が今更ながらに蘇る。