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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第48章 《巻の壱―涙―》
「お内儀(かみ)さん、ちょいと邪魔しても良いかね」
聞き憶えのある声に、泉水はゆるゆると声のした方を見る。三和土にひっそりと佇んでいたのは、岡っ引きの勘七であった。
「変わりはないですかい。相変わらず毎日、暑いねえ。良い加減に少しは涼しくなっても良いと思うんだが」
勘七は穏やかな声音で言う。泉水の憔悴ぶりを見て、ハッと胸を衝かれたようであった。が、利口な勘七はそれについては何も触れず、何げない様子で話しかけてくる。