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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第48章 《巻の壱―涙―》
勘七はそこで言葉を止め、小さな息を吐いた。
「お内儀さん、お前さんがどこの誰であろうが、あっしは詮索する気は毛頭ありやせん。あっしは商売柄、色んな人間を見てきました。罪を犯す者が皆、極悪非道の奴らばかりじゃねえってこともよく知ってる。いや、むしろ、根っからの悪人よりは、ごく真っ当な普通の人間の方が多いんですよ。それも、止むに止まれぬ事情で、他人を思いがけず手に掛けちまったってえ事件も少なくはありません。