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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第49章 《巻の弐―哀しみの果て―》
そのため、泰雅の方が躍起になり、奥方を歓ばせようと、湯水のごとく金を使い簪や櫛、更には身の回りの美々しい調度品などを揃えることになる。だが、氷のように冷ややかな美貌を持つ奥方は、けして微笑もうとすらしなかった。いつも虚ろなまなざしを宙にさまよわせている。
いつしか榊原家の家臣の間では、
―奥方さまは国を傾ける唐の美女、楊貴妃の生まれ変わりやもしれぬ。
なぞと、口さがない噂がひろがっていた。