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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第49章 《巻の弐―哀しみの果て―》
「黎次郎、大きくなって」
泉水は五年ぶりに手許に戻ってきた我が子を力一杯抱きしめた。しばらくの間、母子はずっとそのままの体勢でいた。母のやわらかな胸に頬を押し当てる黎次郎からすすり泣きが洩れた。
その様子に、傍らの美倻もしきりに涙をぬぐっている。
「もう少しお顔をよく見せて下さいませ」
やがて黎次郎が落ち着くのを待って言うと、黎次郎がこっくりとする。泣いたのが恥ずかしいのか、少し面映ゆげな表情であった。