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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第51章 《巻の四―花の別れ―》
そう言って立ち上がろうとする腕をふと捉えられた。泉水は自分の手を掴む男の手をまじまじと見つめた。先刻手を取られたときは気付かなかったが、泰雅の手は随分と細くなったようだ。かつては逞しかった男の腕は見る影もなく枯れ木のように痩せ衰えていた。
そのあまりの変わり様が切なかった。
泰雅が慌てて身を起こそうとして、顔をしかめる。腹部を押さえ、小さく呻いた。
「動かれてはなりませぬ。少し御寝あそばしませ」