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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第51章 《巻の四―花の別れ―》
どれくらい眠ったのだろう。また、浅い眠りにたゆたっていたようだ。
泰雅はふと眼を開き、周囲を見回す。
広い、広い野原にたった一人で佇んでいる。
ここが、どこなのかは判らない。行ったこともない場所だった。だが、不思議と心地良い。病に冒された身体がふわりと軽くなり、痛みも感じない。
眼の前を忙しなく羽根を動かしながら、一匹の蝶が通り過ぎてゆく。見たこともない―羽根に複雑な模様のある美しい蝶である。