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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第51章 《巻の四―花の別れ―》
その征も三十七、幸いにも良き男とめぐり逢い、所帯を持って三人の子を生んだ。征の亭主は飾り職人で、一家は裏店暮らしではあるが、家族が労り合い、支え合って慎ましく暮らしている。征は女として幸せな人生を歩んできたといえるだろう。その征は一男二女に恵まれたが、その長女富(ふう)は既に日本橋の呉服太物問屋に嫁ぎ、跡取りとなる男児をあげている。器量良しで評判の富は、通りすがりの大店の若旦那に見初められ、玉の輿と他人に羨まれながら嫁いでいった。