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第55章 第一話　【春雷】

　今日は、祐一郎が半年ぶりに槙野の屋敷を訪れることになっている。この前に逢ったのは半年前、去年の秋のことだった。いつものように父新田定利に伴われてやってきた祐一郎の顔が心なしか蒼白く見えたのが気になった。元々身体が弱くて病がちだとは聞いてはいたけれど、これまで祐一郎は、半年に一度の割合で顔を見せにきた。だが、そのときに見た少年の顔は特に病弱そうには見えなかった。ただ線の細い、色白の男の子といった感じだった。