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第55章 第一話　【春雷】

　それにしても、時橋と泉水の付き合いは、かれこれ十年になるというのに、どうして時橋はああも容易く泉水の術中にはまるのか。泉水は時橋を好きだし、母のように慕っている。が、あの口うるささだけは苦手で、子どもなりに様々な知恵を巡らせては時橋を煙に巻いている。いつも似たような手口を使っても、時橋はあっさりと泉水に騙され、お説教の途中で逃げられてしまうのだ。