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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第55章 第一話 【春雷】
 これは泉水の癖のようなものだが、時橋はこの仕草をたいそう嫌う。まるで男の子のようだし、第一、槙野家の姫としての品位も何もあったものではないと、見つけられたら、また長々と訓戒を聞かなければならない。
 泉水が一人で思い出し笑いをしていたときのことだった。少し先に腰をかけている若い男の姿が眼に入った。廊下に腰をかけ、男は長い脚をだらりと垂らしたまま、ゆらゆらと揺らしている。その子どものような仕草が少しおかしくて、泉水は、またクスリと笑った。
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