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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第55章 第一話 【春雷】
祐次郎が亡くなったのは、それから丁度、一年後のことだ。その年の冬は殊に寒かった。
江戸の町にも質の悪い風邪が流行り、大勢の罪なき人が亡くなった。祐次郎の生命を奪ったのはその悪質な病ではなかった。ほんの風邪を引いただけであったのに、それが因で亡くなってしまったのだ。
祐次郎が危篤と聞いた夜、泉水は一晩中眠れなかった。折しも夕刻から降り始めた雪は一晩中降り止まず、泉水の心の中にも祐次郎との数少ない想い出や、不安がまるで雪の切片のように荒れ狂い、舞い踊った。
江戸の町にも質の悪い風邪が流行り、大勢の罪なき人が亡くなった。祐次郎の生命を奪ったのはその悪質な病ではなかった。ほんの風邪を引いただけであったのに、それが因で亡くなってしまったのだ。
祐次郎が危篤と聞いた夜、泉水は一晩中眠れなかった。折しも夕刻から降り始めた雪は一晩中降り止まず、泉水の心の中にも祐次郎との数少ない想い出や、不安がまるで雪の切片のように荒れ狂い、舞い踊った。