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第58章 《弐》

　その問いは、維助の心にもあい通じるものがある。まるで、おせんに対する彼の気持ちを言い表しているかのようでもあった。
　何故、おせんの亭主は惨殺されたのか。科人はいまだにお縄になっていないというが、そこには何か他人(ひと)には話せぬような理由(わけ)が隠されているのか。
　もっともっと、おせんのことを知りたい。この美しい女に秘められた過去を知り、ぬぐえる哀しみがあるのだとすれば、自分がぬぐってやりたい。維助は強くそう思った。