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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第58章 《弐》
おせんは、維助の言葉に悪戯っぽい表情を浮かべた。
「ええ、誰も知りません。知らせたって、今更、どうしようもないことですもの。うちの人を殺した男―前の亭主もずっと昔に病で亡くなりました。どちらも死んじまった話を今頃になって当事者が亡くなってから蒸し返しても、何の意味もありませんからね。この長屋のお人は皆、私がここに来る前にどこで何をしてたかなんて知っちゃいません。それでも、そんな私を快く仲間として迎え入れて下すった。良き隣人に恵まれた私は果報者です」
「ええ、誰も知りません。知らせたって、今更、どうしようもないことですもの。うちの人を殺した男―前の亭主もずっと昔に病で亡くなりました。どちらも死んじまった話を今頃になって当事者が亡くなってから蒸し返しても、何の意味もありませんからね。この長屋のお人は皆、私がここに来る前にどこで何をしてたかなんて知っちゃいません。それでも、そんな私を快く仲間として迎え入れて下すった。良き隣人に恵まれた私は果報者です」