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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第58章 《弐》
たとえ添うことができなくても。この想いを伝えることができなくとも。ただ惚れた女の傍でひっそりと見守ることができたなら、それで十分ではないか。
一時は、お征の父親になっても良いとまで思いつめたことが、他人事のように思えるほど、心は存外に落ち着いていた。
おせんは、維助におせんなりの優しさを示した。ならば、維助も男として、その優しさをきちんと真正面から受け取るべきだ、想いを伝えぬまま潔く身を退くべきだと悟ったのである。