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第60章 《其の壱》

―時橋には、いまだ幼い三人もの子がおりまする。ましてや、末の姫は、我が子と同年の赤児。確かに、殿の仰せのごとく、時橋は気心も知れ、心利きたる者にて、やがて生まれきたる和子を託すには最適の人物なれど、それでは、時橋が、弥子が哀れにございまする。殿、弥子は我が姉とも言うべき大切な者にございます。私とは姉妹のように育ち、私は弥子を真の姉のように信じ、慕うて参りました。その弥子をむざと不幸に陥れるようなことを、いかで私ができましょうか。何とぞ、そのことだけはお聞き入れ下さいませぬか。