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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第60章 《其の壱》
―この男(ひと)は何もかも判っているのだ。
弥子は改めて嗣道という男の懐の深さを想った。
良人は、弥子をすべて理解している。いや、単に弥子という個人だけではなく、弥子を取り巻く状況をも併せて理解しているのだ。その上で、いっても良いと言っている―。
だが、それは、とりもなおさず幼い三人の娘たちとの絆を断ち切ることでもある。
これから先は、我が子よりは養い君である御子のことだけを考えて生きてゆかねばならない。