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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第60章 《其の壱》
「―申し訳ございませぬ。妻としての十分な勤めもできませぬ中に、屋敷を離れることになってしまいますが、お許し下さりませ」
弥子はその場に両手をついた。
その肩にそっと置かれた大きな手の温もりを、弥子は一生涯忘れないと思った。
「いや、嫁いで参りしより四年間、そなたはよく尽くしてくれた。女々しいようだが、今だけは言わせてくれ、弥子。そなたがいなくなると考えただけで、俺は淋しい」
弥子はハッとして弾かれたように顔を上げる。