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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第60章 《其の壱》
 明け方近くになって、弥子は一時、浅い微睡みにたゆたった。その眠りの中で、弥子は夢を見ていた。何の夢かは憶えてはいない。けれど、哀しい夢だった。夢の中で弥子は泣いていた。何が哀しくて泣いているのかも判らず、弥子は涙を流し続ける。そんなとりとめもない、物哀しい夢だった。
「―時橋どの。時橋どの」
 遠くで誰かが自分を呼んでいる。
 そう思った刹那、弥子はハッと我に返った。
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