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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第61章 《其の弐》
貴美子の心残りは、ひとえに残してゆく幼い姫君のことであったろう。これからは何があっても、この姫さまをご立派にお育てするのだ―と、弥子は一途に念じていた。それでも、生まれたばかりの嬰児(みどりご)は外見からは想像もできないほどの力強い声で泣き、弥子の乳を吸う力も泣き声に負けないほど強かった。
その赤児の思いがけぬ生命力に触れる時、弥子は、この小さな姫には御仏の加護に守られているのだと思う。幼子を一人残して逝く貴美子の切なる祈りが、この小さな姫に強い生命力を与えたのではないかと。
その赤児の思いがけぬ生命力に触れる時、弥子は、この小さな姫には御仏の加護に守られているのだと思う。幼子を一人残して逝く貴美子の切なる祈りが、この小さな姫に強い生命力を与えたのではないかと。