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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第7章 《巻の弐》
坂井のような男は世が世ならば、一国一城の主にもなり得ていただろう。今の世は武芸だけで身を立てることなど、およそ夢のまた夢である。平和なご時世には、槍や刀は必要なく、ただ物騒な代物なだけ、武士は真似事程度に武芸をたしなみ、自分の生命が守れるほどに剣が使えれば良い。泉水の父源太夫のような能吏が頭角を現すのも、今が太平の世だからだ。源太夫はけして柔弱ではない。武芸もひととおりはできる。だが、どちらかといえば、剣を使うよりは頭を使う方が向いているだろう。