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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第61章 《其の弐》
「ご自分の儚い宿命(さだめ)を誰よりもご自身が知っておられたればこそ、おん自ら姫さまにお乳を差し上げたいと思し召したのではないか」
弥子は予期せぬ良人の言葉に愕然とする。
貴美子が自分の運命(さだめ)を知っていた―。知っていて、いや、知っていたからこそ、医者の制止もきかず、自ら我が子に乳を与えた。
それは、あくまでも推測の域を出ないことだ。当事者である貴美子が逝ってしまった今、その真意を推し量るすべもない。けれど。