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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第61章 《其の弐》
翌朝、弥子は身の回りの荷だけを持ち、屋敷を出た。必要なものは、これから暮らすことになる槙野の屋敷ですべて取り揃えてくれる。我が家から持ち出すのは、ほんの数えるほどの手荷物だけであった。
玄関を出る弥子を、嗣道と幼い子どもたちが見送る。新田家の前には立派な駕籠が横付けされている。それは槙野家から遣わされたものであり、これより後、弥子は新田嗣道の妻ではなく、源太夫の息女の乳母〝時橋〟として生きてゆくことになる。