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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第61章 《其の弐》
四十を幾つか過ぎたばかりのその家臣は源太夫の信頼も厚い坂井琢馬直助である。重臣の一人で、嗣道の父嗣光とも昵懇の仲であった。琢馬もまた嗣道と同様、この泰平の世にはたいした出世もできない無骨者だ。武芸達者では知られていたものの、頑固で偏屈、人付き合いが悪いと評判の男でもあった。
だが、実際に、琢馬は噂ほどの変わり者ではない。要するに、嗣道と同じ人種で、話下手なため、他人からは無愛想でつっつけんどんだと思われるらしい。