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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第64章 十三夜の月 《壱》
元々、菊之屋は壱之進の養父(祖父)主馬の贔屓にしている見世であり、壱之進が菊之屋の馴染みになったのも、そういう縁かららしい。壱之進はすぐに京香に夢中になり、連日のように通いつめた挙げ句、三ヵ月も経たぬ間に京香を身請けした。
売れっ妓であったゆえ、莫大な身請け金が動いたと云われるが、その大金はすべて祖父の主馬が出してやったという。落籍(ひか)された時、既に京香の腹には壱之進の子が宿っていた。いや、知り合ってまだ月日も経ぬ突然の落籍は、実は京香の懐妊が裏にあったからだった。
売れっ妓であったゆえ、莫大な身請け金が動いたと云われるが、その大金はすべて祖父の主馬が出してやったという。落籍(ひか)された時、既に京香の腹には壱之進の子が宿っていた。いや、知り合ってまだ月日も経ぬ突然の落籍は、実は京香の懐妊が裏にあったからだった。