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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第64章 十三夜の月 《壱》
だが、家を出たからといって、どこにも行く当てのない身である。それでも、もうここ―江戸にはいたくないという気持ちは、はっきりとしていた。ここではないどこかへ、壱之進もあの女も、そして兄さえもいない遠い場所に行きたい。そう思った。
誰も自分を知らない遠い場所に行って、ひっそりと何もかも忘れて暮らしたい。果たして本当にそんな場所があるのか、それが可能かさえも判らなかったけれど、そのときの美咲には、ただ江戸を離れることしか頭になかった。
誰も自分を知らない遠い場所に行って、ひっそりと何もかも忘れて暮らしたい。果たして本当にそんな場所があるのか、それが可能かさえも判らなかったけれど、そのときの美咲には、ただ江戸を離れることしか頭になかった。