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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第64章 十三夜の月 《壱》
 大切な家族を哀しませたくはないけれど、このままおめおめと生き存えて、憎しみに凝り固まって醜い鬼となるよりは、潔く生命を絶つ方がまだしも良いだろうと思う。
 美咲はゆるゆると顔を上げた。菫色の空に円い月が昇っていた。殆ど満ちているのに、ほんのわずかにいびつさを残した月が、何故かひどく頼りなく見える。十三夜の月の中途半端さが今の自分に似ているように思えた。
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