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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第64章 十三夜の月 《壱》
 その笑顔は先刻までと異なり、どこか自嘲気味だ。この男には、今までのような屈託のない笑顔が似合うのに、と、美咲は少し哀しかった。
「―ありがとうございます」
 美咲が心からそう言った。
 自分は壱之進に捨てられたも同然の女だ。兄誠一郎の前で、壱之進は堂々と宣言したのだ。たとえ子どもの存在を抜きにして考えたとしても、美咲よりはお京を選ぶ、と―。
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