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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第9章 《巻の四》
 雨が、降っている。
 まるで女人の吐息を束にしてより上げたような繊細な雨。まるで泉水の心の奥にまで振り込み、しっとりと濡らすような雨だ。
 泉水は槙野家の小座敷にいた。ここは表と奥の境にあり、来客用の部屋として使われている。既に一刻ほど前、泉水の良人榊原泰雅が到着、父源太夫と二人、一刻余り男同士の話をじっくりと腰を据えてしたようだ。舅と婿の親密な対談は父の私的な部屋―朝方、泉水と父が水入らずで話した居間で行われた。その間、泉水は別室に控えていた。
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