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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第9章 《巻の四》
 泰雅の話では、おそのは来月には川越の従兄を頼って、子どもを連れて江戸に発つことになっているという。おそのという女に逢うことはないけれど、その女と子どものこれからの幸せをひそかに祈らずにはおれない泉水であった。
 泉水がぼんやりとそんなことを考えていると、泰雅がふと呟いた。
「ここの紫陽花もきれいだな」
 泰雅の視線は庭の紫陽花に向けられている。いつしか雨は止んでいたようだ。
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